「なぜ東京ではなく、静岡なのか?」

「なぜ東京ではなく、静岡なのか?」

「いつか行こう」は、「行かない」と同義である。

この世の心理法則を痛感したのは、雨がしとしとと降る2026年6月末のある日のことでした。

目的地は、静岡県掛川市にある「資生堂アートハウス」。
日本を代表する美の巨人・資生堂が誇る美術館です。

「なぜ東京の銀座ではなく、静岡の掛川なのか?」

長年、私の頭の片隅で「旅のミステリー」としてくすぶり続けていたこの疑問。重い腰を上げ、ようやく現地へと降り立った瞬間、その謎はあっけなく氷解しました。

隣にデンと鎮座していたのは、広大な「資生堂掛川工場」。
なるほど、美の源泉(工場)と美の結実(美術館)は、この地でがっちりタッグを組んでいたわけです。

駐車場からアプローチへと足を踏み入れると、そこはもはや別世界。綺麗に刈り揃えられた芝生の丘、四季を彩る花壇、雨粒を含んでいっそう鮮やかに輝く木々の緑。その中に静かに溶け込む洗練された建築を目にした瞬間、心がすーっと整っていくのを感じました。「ああ、この空気感、この空間美。だからこその掛川だったんだ」と、深く腑に落ちたのです。

しかし、現実はいつだって少しドラマチックで、そして意地悪です。
この日がなんと、閉館まであと1週間という奇跡的なギリギリタイミング。

雨模様にもかかわらず館内は多くの人で賑わっており、すれ違う人々の静かな佇まいの中には、「ここが無くなってしまう」という切ない余韻が漂っていました。

「なんでもっと早く来なかったんだろう」
「どうして『いつか』なんて言葉で後回しにしていたんだろう」

静寂の中で美と向き合いながら、心の中で自分に対する小一時間のお説教タイムが始まりました。最初で最後になってしまったけれど、あの静謐で洗練された美しさは、しっかりと胸の奥に刻み込むことができました。

今後はその機能が東京・銀座の「資生堂ギャラリー」へ集約されるとのこと。
今回の反省を活かし、次は「いつか」ではなく、「近いうちに」銀座へ突撃しようと思います。

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