実はこのリグニンに似た化学構造の物質があります。それはダイオキシンで、塩化ビニルなどの塩素を含む物質が不完全燃焼すると発生する物質です。猛毒のため廃棄もできず、分解するのも簡単ではありません。極めて似た物質であっても、人間が作り出すと有害となり、自然界が生み出すと有益な木材となるということです。
この猛毒のダイオキシンを分解するのに、逆に木材のリグニンを分解するバクテリアなどの菌の力を活用する研究が進められています。
また、木材の成分の半分を占めるセルロースについても、驚くような最新技術があります。木材のセルロースを使って、セルロースナノファイバーという新素材が生まれています。
セルロースナノファイバーは、強度は鉄の5倍で重さは逆に鉄の5分の1しかありません。まさに鉄よりも強いという表現が似合いますが、それが木材から生まれた素材なのです。
たとえば、地震での建物の強度を計算するためには、強さと重さが大事な要素です。重たければ重たいほど、慣性の法則が働いて地震力は大きくなり、その地震力に耐えられるだけの強度があるかを計算しているからです。
もちろん建物だけではなく、自動車や電化製品などでも軽くて強い素材は、幅広い分野での使用が期待されます。木材の底力を知れば、もしかしたら、鉄の時代から木材の時代になるのかもしれません。