建設現場以外に、木造建築の骨組みを見ることができるのは社寺や古民家です。現(あらわ)しといわれて、これらの建物では骨組みが表に見えています。
現代の住宅の骨組みと見比べてみると、柱や梁にはとても立派な木材が使われています。今の時代にこれだけの木材を揃えようと思えば、相当の費用をかけなければなりません。それだけでも価値はありそうです。
実際に古民家が解体されると、使われていた木材は価値のある古材として流通することもあります。
だからこそ、解体しないで古民家を再生して利用することを願う人もいて、生まれ変わっている古民家も多くあります。現実に同じレベルでの木材を揃えて再建築する手間と費用を考えても、さらに歳月をかけて乾燥し深みを増したことも価値の創造と考えても、簡単に手に入るものでもありません。
こうした古民家の再生に対して、忘れてはならないポイン卜があります。それは古民家の多くが、意外にも単純な構造になっていることです。
現代の一般大工にはできないような、木構造の技術の粋を集めて作られていることは間違いないのですが、逆に躯体の解析や設計スキルは拙かったので、平面的には規則正しく柱を並べて、極力単純につくられています。
このような建物の建て方は、「間面記法」と呼ばれ、現代の〇LDKと同じように、〇間〇面で建物の概要を表しています。京都の有名な三十三間堂は、柱を34本並べて柱間の数が33間ある細長い建物である堂という意味です。家を建てる時も、その間面で依頼すれば、建物の規模がわかり、さらには用途も察しがつきました。
このように単純な間面記法のつくりでできているだけに、柱や梁を大事にさえすれば、間仕切りや設備機器を並べるのは自由にして現代流の住み方に改修して再生できるのです。マンションのフルリフォームのようなものです。もちろん現代流のインテリアデザインにすることも可能です。
逆に細かい柱をたくさん立ててしまうと、改修してデザインし直すことは難しくなります。長く資産価値を確保するためには、こうした柱や梁の骨組みを想定して設計することがポイン卜です。