ある日、工事現場で働いている大工さんに、貴重な話を聞きました。
今は、後を継ぐ息子さんに技を伝えながら、一緒に働いています。
「このおうちは、とても楽しみにしている現場なんです。これから造る階段が腕の見せどころで息子と緒にやろうと思って…」
重ねて聞いていると、家の工事にもすっかり工業化やシステム化が進んでいると感じられます。
木材を仕入れて建前までに大工が刻んでいた木組は、今では工場でプレカッ卜されて現場に搬入されます。
面倒なタイル割りを考えて下地を組んでいた浴室も、ユニットで運ばれて据えつけるだけで終わってしまいます。
プレカット材はコンピュータ内の仮想空間で仮に組み上げられ、一休となったユニットバスは水漏れの心配も少なく、間違いなく住宅の品質は向上しています。
そのかわり、大工の技の見せどころは少なくなっているのです。
その他、昔から大工の技量に任されていた部位に床の間があります。
不整形な床柱に、材種の違う落し掛けや長押床桂を組み合わせるなど、複雑な技能を必要とします。
しかし、床の間をつくる家も極めて少なくなりました。