人が人であるための大きなポイン卜のひとつに、家を構えることがあります。
もちろん、人間以外にも巣をつくる動物はたくさんいますし、中には建築物ともいえるほどの居住施設を築き上げる動物もいます。人間にいちばん近いとされる類人猿の多くは、巣を持たないで遊動生活を行なっていることを考えると、家があることは人間らしさの原点であるといえます。
現実に、家を持たない人聞は、本当に特別な事情がない限りいないといっても過言ではありません。
その人類の家の始まりが、シェルターであったことは容易に想像がつくことです。外敵となる動物から身を守ることはもちろん、風雨や日照を含めて暑さや寒さを和らげるためのシェルターが大いに役立つていたはずです。
その大きな役割が、身体を横にして休めるためであったとすると、人類の家は寝室から始まったと考えられます。未聞の部族のドキュメンタリーを視聴していると、まさにその通りで、調理等は屋外で行われているシーンを見かけます。個別の家は、寝室そのものです。
でも、日本に残されている竪穴式住居を見ると、家の中に炉の跡が残されています。人類は火を上手にコントロールできるようになって、家の中に持ち込むことができるようになったのでしょう。その名残りともいえる囲炉裏は、日本では地域によって、昭和の後半まで残されていました。
囲炉裏のある空間を考えると、人類の家はダイニングであったということもできます。火が家の中に入ることによって、暖を取るだけではなく、煙に燻されることによって殺菌の効果も上がったと思われます。木材の腐食菌も抑えられて、家はより長持ちするようになります。
さらに地域による素材の違いや、家族の形態などの社会的な要因が加わって、現代の家まで進化してきます。でも、寝室やダイニングがあるというだけなら、わざわざこうして人類の長い歴史を語らなくてはならないほど、ゆっくりとした進化でしかありません。逆に、家はそれほど変わっていないとも考えられます。