さらに、実際に人の皮膚の研究の中では、網膜で光や色を識別しているロドプシンやオプシンというタンパク質が、人の肌にも存在していることが分かっています。つまり、皮膚でも光を感じることができるのです。同じように音の受容体もあり、肌で音を感じることができます。
それ以上に人間の触覚は繊細です。たとえば、平らなテーブルの上に、髪の毛が落ちていても、人の手で触ればわかります。髪の毛の太さは1ミリの数十分の1ですが、人の指先は千分の1まで検知できます。ところが、人の指にある圧力を感じる圧点は、ミリ単位で分布していて、どうしてその感覚が生まれるかはわかっていません。
現実に職人さんの手による製品づくりでは、よほどの精密な測定器で測らなければ、判らないほどの微妙な調整を手で触るだけで行っています。
こうして分かる質感も、材の凸凹だけではありません。たとえば、日本語でよく使えわれる、ザラザラ・サラサラ・ベタベタという触感の擬音語を並べてみると、滑らかさの他に、乾湿や硬軟まで判別していることがわかります。
だからこそ、本当にわずかな空気の動きも感じ、さらにその空気の湿度まで感じています。目・耳・鼻では、動物には敵いませんが、触感では人の肌は、どの動物にも負けない感覚器なのです。